2026年7月22日
旅行先の晩ご飯、結局ホテル近くのチェーン店で済ませていませんか
チェックインを済ませて荷物を置いた瞬間、今日いちばんほっとします。あとは晩ご飯を食べに出るだけです。時間はたっぷりあります。なのに、この「時間はたっぷりある」がそもそもの間違いだったと後で気づきます。
スマホで検索します。この街の名物は何だろうと、地図アプリを開き、評価の高い店を探し、写真を見比べ、営業時間を確認し、予約が必要かどうかを調べます。移動と観光ですでに疲れている頭で、これを一からやります。気づけば1時間近く経っていて、空腹と面倒くささが同時に限界を迎え、結局ホテルの1階に入っていたチェーン居酒屋に吸い込まれていきます。
荷物を置いた瞬間はあんなに解放感があったのに、スマホを開いた瞬間から、旅はまた別の作業に切り替わってしまいます。窓の外にはこの街だけの夜景があるのに、視線はずっと画面の中の星の数を追いかけています。
時間が余っているのに、決められない
出張の合間の食事なら、時間切れで諦めがつきます。でも旅行は違います。晩ご飯の時間は空いていますし、明日の予定にも余裕があります。決められない言い訳が見当たらないぶん、決められない自分に対してじわじわ苛立ちが募っていきます。
原因は時間じゃなくて、判断力の方が先に尽きているんだと思います。旅先ではその日一日だけでも、電車の乗り換え、荷物をどうするか、観光ルートの順番など、普段より多くの小さな決断をこなしています。そこに「今夜どの店に入るか」という、地元でならもっと軽く扱える決断が乗っかってきます。休みに来ているはずなのに、店選びだけは律儀に仕事モードでやっている感じがします。
しかも旅先では、その判断の一つひとつに「失敗したくない」という重みが普段より乗ります。何しろ、この街での食事は今回だけかもしれません。だったら外れは引きたくない、という慎重さが余計に決断を遅らせて、結果として一番決断力を使わない選択肢、つまりチェーン店に流れ着きます。皮肉な話です。
リサーチのために旅行しているわけじゃないのに
レビューサイトを開くと、星の数と口コミの文字数に押し負けて、選ぶこと自体が作業になっていきます。評価4.2の店と4.3の店、写真映えする店と地元客で賑わっている店。比べれば比べるほど選択肢は絞られるどころか増えていく気がして、店を探すために旅行に来たわけじゃないのに、なぜか宿の部屋でリサーチ業務をしている自分がいます。
休暇というのは本来、何も決めなくていい時間のはずです。なのに晩ご飯の一件だけ、平日の仕事さながらに比較検討し、条件を絞り込み、最終判断を下しています。旅先で唯一残業しているのが、店選びだったりします。
その街でしか出会えない一軒を、逃している
その街に来られる機会は、たぶんそう多くありません。次にまたこの土地を踏む保証もない中で、選びきれなかったという理由だけで、どこの街にもあるチェーン店の同じメニューを食べて帰ります。悪いわけではありませんが、もったいなさだけが後から効いてきます。
地元の人しか行かないような定食屋も、駅前の喫茶店も、地図上には確かに表示されています。検討の土俵にすら乗らなかっただけで、存在しなかったわけではありません。旅の記憶として残るのは観光地の写真だけで、夜ご飯の記憶はどの街も同じチェーン店の同じ味、というのは少し寂しい気もします。
比べる作業ごと手放してみる
比較を尽くしてから選ぶという発想自体をやめてしまえば、宿での1時間はもっと軽くなるはずです。私が作っているRoambleというアプリは、現在地周辺の営業中のお店を3件だけランダムに提案します。比較検討の材料はほとんど渡されません。ピンとこなければ引き直せますが、選ぶという工程そのものが最初からかなり小さくしてあります。
提案された一軒に向かい、実際に訪問するとXPが貯まってレベルが上がり、バッジも増えていきます。その街で入った店の数が、旅の記録として少しずつ積み上がっていく感じです。
次に知らない街に泊まる夜は、宿の部屋で1時間かけて選ぶかわりに、提案された一軒の扉を開けてみるのはどうでしょう。